ものの形の成り立ち
- 2021/06/17
- 19:00
美術プログラム、今回のテーマは「ものの形の成り立ち」です。
絵を描くとき多くの人は、この「ものの形の成り立ち」を意識しないまま描いています。
世の中のあらゆるものすべてが、それぞれ別々の形だと思って描いているのです。
「あれはあれ、これはこれ」と考えていては、なかなか上手に描けません。
ではどのように考えればよいのでしょう。
ものの形は大きく分けて「直方体」「円柱」「球」で出来ている、です。
ものを見るということは、ものの形をこのように分類して理解することなのです。
「直方体」とは、四角い「お豆腐」型のことです。「お豆腐」が描ければ、人が作ったものの多くが描けます。
例えば机やタンスはそのまま「お豆腐」型ですし、ソファやピアノは「お豆腐」を「L字」型に切った形です。
車はワンボックスならそのまま、セダンなら「お豆腐」の上に小さい「お豆腐」を載せた形です。家ならば「お豆腐」の上に、三角に切った「お豆腐」を載せれば家に見えます。
「円柱」は丸い柱のことで、これが描ければ木の幹や枝、ごみ箱、バケツ、コップ、瓶、缶ジュースなどが描けます。
更に大事なことは、人間や動物を描くときの胴体や腕や脚、首などがやはり「円柱」である、ということです。
次は「球」です。「球」は描くときには「円」を描いて、「陰影」を付けて「球」にしますが、「陰影」の話は少し難しいので、もっと後にします。
ボールや地球儀は当然「球」ですが、人間や動物の頭が「球」なのは見逃しがちです。山は「球」を半分に切ったものです。
ここで頭休めに、初心者がよくやってしまう例を出してみましょう。「地球儀を描くとき球であることを忘れて地図を描き始める」とか「人の頭を描くとき、球であることを忘れて髪型から描き始める」です。どうでしょう、やりそうでしょう。
「球」を描くときに必要な、「円」、「円柱」を描くとき必要な「楕円」の描き方も、いずれお話したいと思います。
このように、すべてのものを三つの基本形に分けて描くと、ものの形らしくなります。
これに「遠くのものは小さく見える」という「遠近法」を組み合わせて描くと、「絵が上手」に一歩近づくことができます。


今回も難しい課題でした。「あれはあれ、これはこれ」のレベルから、「直方体」が車やソファの基本の形であることの認識、描くと四角形がなぜ歪んでしまうのか、という「遠近法」の理解などは難しいのは確かです。
しかし話をしていくと、直方体でできているものを次々に指摘していくなど、驚かされました。



また3年生でひとり、小学生のレベルをはるかに超えた、抜群の理解力と描画力を示す子がいました。将来は1級建築士ということで、頼もしい限りです。
1年生からは「車や消しゴムの角は丸いのに、どうして直方体を描くのかわからない」という、鋭い指摘がありました。
3次元の実態のあるものを、「平面に」「無理やり」「疑似的に」「立体的に見える」ように描くのですから、小さな子どもの目には、「どこかにごまかしがあるように見える」のかもしれないという、本質的疑問を問われているような気もしてきました。
学んだことがどこか記憶に残っていれば、いずれ時期がきて「ああ、そういうことか!」と理解してくれることでしょう。
次回は夏休みも近いので、「夏休みの課題」に備えて「色の作り方」と「筆の使い方」です。
これらは「技術」ですので、感性というものとは関係ありません。しかし何故か教えられた記憶がありませんが、どうでしょう。
石田