色いろなはなし
- 2021/06/25
- 19:00
このブログ、もちろん保護者向けに書いているのですが、それ以外の読者もいることがわかりました。「自分も習いたい」とのことでした。一つのテーマについて数時間訓練すれば上手になりますよ、と答えました。
さて今回のテーマは、夏休みの課題制作に備えての、「色の作り方と筆の使い方」です。
美術が苦手になった原因の一つに、絵の具で絵を描いていると、どんどん色が汚くなっていき、途中で嫌になってしまう、ということがあります。
何故そうなるかというと、色にも法則があって、それにそって色を作り、ぬらないと汚い色になっていくのは当然だからです。
「赤色」とか「青色」とかいうのを「色相」といいますが、近い「色相」同士で混ぜないと、濁ってしまいます。例えば「赤」と「黄色」を混ぜれば「オレンジ色」になりますが、反対色である「赤」と「緑」を混ぜれば「灰色」になってしまいます。
「明るい赤」とか「暗い赤」という表現がありますが、明るさの度合いを「明度」といいます。これにも法則があって、「明るい色」に「暗い色」を混ぜる、です。
「黄緑色」を作る時、「緑」に「黄色」を混ぜてもなかなか「黄緑」になりません。「明るい」黄色に「暗い」緑を少しづつ混ぜれば、希望の「黄緑色」が得られます。




今回はこれらの法則通りに色を作り、「白」「黒」を混ぜて新しい色を作ってみました。
必要な絵の具の数は、「赤」「黄」「緑」「シアン(水色)」「青」「赤紫」と「白」「黒」の8色のみです。
昔のカラープリンターは、C=シアン、M=マゼンタ、Y=イエローの「三原色」と、K=ブラックの4色のみでした(白は紙の白を利用します)。
「黄」に「赤」で「オレンジ」、「黄」に「緑」で「黄緑」、「緑」と「シアン」で「青緑」、「青」と「赤紫」で「紫」の4色を作ります。「白」「黒」を除いて、10色の濁りのない「純色」の「色相」ができます。
これらの10色に「白」を、また「黒」を混ぜて、合わせて30色になります。
どうでしょう、かなりシステマティックにできるものでしょう。ですから感性ではなく技術なのです。普通「黄色」に「黒」を混ぜるなど考えませんからね。結構良い色になります。
完成したら「カタカナ50音表」や「アルファベット表」のように、机の前に貼っておいて毎日ながめていると、色感を養うよい訓練にもなります(加藤先生も、自分も作りたいそうです)。
この表と上記の8色があれば、不要な色(例えば「茶色」、あとで説明します)や、簡単に作ることができる「オレンジ」や「黄緑」なども入っている絵の具セットをそろえる必要はありません(絵の具セットには、何故か大事な「赤紫」が入っていることは少ないですし)。
「筆の使い方」ですが、「前の色が乾いてからぬる」「筆は常にきれいな水で洗う」「絵の具はきれいな水で溶いて筆につける」「遠くの風景はぼかしてぬる(これも遠近法)」などです。
「茶色」の話。何故か木を描くと皆、木の幹を「茶色」一色でぬるのです。赤松以外の木の幹は「茶色」ではありません。しかし子どもは勿論のこと、おとなでも皆「茶色」一色にぬるのです。
これももう「木の幹は茶色でぬる」という、「思い込み」以外のものではありません。センスが疑われますので、今日からやめましょう。どうすればよいのかは、今後行います。
また子どもの絵の特徴として、「青空」に「真っ赤な太陽」が描かれます。成長の過程でこういう特徴を持つ時期というものがありますので、幼稚園児が描くには問題はありません。
太陽が赤いのは「朝日」か「夕日」です。真昼間に真っ赤な太陽を見ることはありませんが、おとなのだれも「変だ」と考えません。これも「思い込み」のうちの一つです。
ちなみに「虹の七色」は、上から順番に「赤」「橙」「黄」「緑」「青」「藍」「紫」であるのはご存じの通りですが、街中では随分でたらめに描かれているのを見かけます。突っ込みを入れながら歩くと面白いですよ。


石田
おまけ
先日なんと1年生の男子が、とても鋭い質問をしたのでご紹介します。「描くのに一番難しいものは何ですか?」です。今までこんな本質的な質問をしてきたのは、大学生でもおとなでもいません。たいしたものです。
おそらく、「動物」とか「見たことないものかなあ」などの返事を期待したものだとは思いますが、美術の根本にかかわる質問でした。
なんと答えたかというと、「色も形もないもの。例えば『暖かい気持ち』とか『動き』とか『風』とか『音』なんかを、絵や粘土などで表すことは難しいね。でもできるよ」です。
できるようになるための練習問題をひとつ。頭の体操に挑戦してみてください。
例 題 長方形の面積を一本の直線で二等分してください。
回答例 この4本の直線、数学的にはいずれも正解です。

では問題です。頭の柔らかさと、美術的センスが問われます。
問 題 長方形の面積を一本の直線で「美しく」二等分してください。
